カナダ人が将来 住みたい憧れの町 ケロウナで・・・
疲れた心を癒しませんか・・・
これから先の人生に必要なヒントとエネルギーが必ず得られるはずです

  
  
  

滝澤のカナダ移住&起業への道のり

 <第161話> 訪れるワイナリーツアーのお客さん
2003年5月。
カナダに移住し、ケロウナで仕事を立ち上げ、5年目に突入しました。それまでの間に、カナダ産ワインの日本輸出と日本での販売は順調に進んでいました。また、多くの日本からのお客さんもケロウナに来てくださいました。

来られた方々の目的は実に様々でした。その中でもっとも多かったお客さんのタイプは、ワイナリーツアーでした。これは、私が主業務として行っていたワイン輸出にも絡みながら、確実にワイナリーツアーのお客さんの数を獲得していくことになったのです。

ケロウナ市内には10箇所以上のワイナリーが集中しています。ケロウナを中心とするオカナガン地方全体では、当時50以上のワイナリーが点在していました。ワイナリーツアーを行うにあたり、訪れるワイナリーの数は有り余るほどあったのでした。お客さんの好みや、その時々の季節に応じて、私がオススメのワイナリーにご案内をします。

春は、新芽がまぶしい色でブドウ畑を彩る風景を楽しませてくれる景色です。
夏は、濃緑の絨毯が敷き詰められたブドウ畑を見て、ため息が出るほどの感動を覚えます。
秋は、黄金色に染まった畑で、ブドウの収穫が始まるシーズンを秋風と共に楽しめます。
冬は、冷寒に包まれたカナダの空気の中で、静まり返ったワイナリーの静寂を感じることが出来ます。

ワイナリーは、一年を通して実に様々な表情を私たちに見せてくれるのです。私は仕事柄、ちょくちょくワイナリーに出向いていましたが、どの季節の風景を見ても、いつも感動し、そして、その光景が日本では味わえないものであることを実感していました。日本から来られたお客さんは、どの季節に来られたとしても、私が予想した通りの喜び、感動、笑顔を見せてくださっていました。

「そうか、ケロウナの魅力はワイナリーなんだな」

このころ、ようやく私はこのような手ごたえを掴んでいたように思います。当初、「ワイナリーツアー」というものに対して、私はとても懐疑的だったのです。ワイナリーだけで、わざわざ日本からケロウナまで、しかもバンクーバーで飛行機を乗り継いでまでケロウナに来るだろうか?という疑問があったからです。しかし、現実は私の想像を見事なまでに裏切り、どのシーズンにもワイナリーツアーを目的とした日本からのお客さんが訪れるようになっていったのでした。

ところが、その後、私は大きなジレンマを感じるようになり、そして大きな壁にぶつかることとなったのでした。




 <第162話> わがままなワイナリーツアー
2003年10月。この年は早春の3月からワイナリーツアーのお客さんが連続した1年でした。実に様々なお客さんがケロウナに来て下さったのです。

・ ワイン好きのカップルや小グループ
・ 単身でやって来たマニアックなワイン愛好家
・ 旅行会社から依頼された団体

実に様々なお客さんがケロウナを中心とするオカナガン地方のワイナリー訪問を目的に来て下さいました。午前中に2カ所のワイナリーを巡り、地元の小洒落たカフェ、レストランで簡単な昼食を楽しみ、午後から再びワイナリーへ出かけます。

1日でだいたい4〜6カ所のワイナリーを巡るパターンが出来上がってきました。私がアテンドするワイナリーツアーには決まりきったコースがありません。マニュアルも存在しません。その時々の状況や条件を基にして私がコースを組み立てていました。申し込みをされる際に、事前にメールで細かいコースを指定してくるお客さんもいましたが、そういう要望は受け付けませんでした。日本では限られた情報しか得られない中から、「Aワイナリーに行って、次にBワイナリーに行き、Cワイナリーでワインを買って、Dわいなりーを見て、最後にEワイナリーというルートでお願いします」 というようなリクエストは全て断りました。

例えば、ワイナリーの奇麗なブドウ畑を見るときの時間と太陽の角度がとても大切なのです。せっかく奇麗なブドウ畑を目にしても、太陽が逆光だったとしたら、畑の緑が写真に写りませんし、眩しくて目を開けることすら苦痛になります。それくらケロウナ、オカナガン地方の春〜秋の日差しは強いのです。ですから、素晴らしいワイナリーの景色を見て頂くためには、

・ どの時間に
・ どのワイナリーの
・ どの畑の角度から

ということが重要であり、そして私はそれを実践したツアーにしていったのです。最初は怪訝そうな表情で私を見ていたお客さんも、1日のワイナリーツアーが終わる頃になると、「なるほど!」という表情に変わっていました。また、季節も重要なコース選定の材料になります。季節によって写る風景の色合いが全く異なります。今、この季節のこの時間なら、△△△ワイナリーよりも、◎◎◎ワイナリーに先に行った方が良いな、という判断の元、ワイナリーを訪れるコースを選定していました。これは、一見無駄なように見えますが、私には明確な目的がありました。それは、お客さんの期待感を裏切らないということだけでした。せっかくケロウナに来てくださったにも関わらず、そこに驚きと感動と喜びが無ければ、「なーんだ、ケロウナになんか来なければ良かった・・・」ということになってしまいます。

・ ケロウナに来て良かった!(また来たい!)
・ ケロウナに来なければ良かった、、、

両者は大きな違いです。それこそ天と地ほどの違いですから、プロとしてやる以上は、これくらい強いポリシーを持って望むべきだというのが私の仕事に対する考え方だったのです。




 <第163話> もっと追求したワイナリーツアー
2003年10月。ワイナリーツアーに対する私の情熱はさらに高まっていきました。それに呼応するかのように、日本からケロウナに来られるお客さんの数も増えていったのでした。実際にケロウナ産のワインを日本に輸出して日本で販売していることを主業務にしていましたから、「他の国のワインのことは分からないけれど、ケロウナのワインに関しては、日本人で一番詳しくなるんだ!」そういう意気込みに満ちていました。私が取り扱っていたワイナリーだけでなく、その他のワイナリーのそれぞれのワインに対しても興味を深めていったのです。その結果、ワイナリーに共通した特徴を発見したのです。

一口にワインと言っても、白ワインと赤ワインだけでは語ることはできません。重要なポイントは、「品種」を知ることです。このブドウ品種については、ワイン文化がもともと無い日本で生まれた日本人には理解できないことなのですが、実はこれが最も大切です。ワイナリーは、複数のブドウ品種を栽培し、ワインを醸造しています。小規模のワイナリーであっても軽く10種類以上の品種を作っています。それぞれの品種には味わいとしての特徴があり、どのワイナリーのどの畑で育てられてのか?によっても、同じ品種でありながら、その仕上がりには大きな差が生じます。毎日のようにいろいろなワイナリーに行き、お客さんと一緒に複数の品種のワインをテイスティングするうちに、

・ Aワイナリーは、白の◎◎◎(品種)が美味しい
・ Bワイナリーは、赤の◎◎◎(品種)が美味しい
・ Cワイナリーは、白の◎◎◎(品種)が美味しい

ということが手に取るように分かっていきました。つまりワイナリーには、得意とする品種とそうでない品種があるのです。1日の中で複数のワイナリーを巡り、1カ所のワイナリーで複数のワインを無目的に試飲していたら、すぐに味覚が麻痺してきます。そのときに一番美味しいワインを試飲してもらうために、私はお客さんに非常に細かいアドバイスをしていました。

「1カ所目のワイナリーは、白のリースリングが良いですよ」
「2カ所目は、特に試飲する必要は無いですが、景色が奇麗ですから写真を撮りましょう」
「3カ所目は、赤のカベルネとメルローがオススメです」
「4カ所目は、ピノブランのアイスワインが抜群です。買うならそれがいいですよ」

その年度、シーズン、タイミングによって、売れ筋のワインは品切れを起こすことが少なくありません。そうした情報も含めて、瞬時に対応し、限られた日数の中で効率よく楽しんでもらえるワイナリーツアーの組み立てをしていったのでした。

専門的な方には専門的な対応を、そうでない一般の方には誰もが楽しめて、味わい、感動できるような内容に仕立てながら、毎日のようにワイナリーツアーを実施していったのです。




 <第164話> ワインフェスティバルで戸惑う日本人
2003年10月。
カナダ西部のワイン産地であるオカナガン地方では、大規模なワインフェスティバルが毎年開催されます。4つの季節それぞれにワインフェスティバルが企画実施されますが、秋のワインフェスティバルが最も大きなイベントです。

秋のワインフェスティバルは、毎年9月下旬から10月初旬の2週間に渡って開催されますが、この「フェスティバル」というイメージを日本人の方々が勘違いされる珍事が毎年、必ず起こっていました。ワインフェスティバルの開催期間中に、私は何度も電話やメールで質問を受けていました。質問の内容は皆さん同じものでした。

「ワインフェスティバルはどこに行けば観られますか?」
「無料で参加できるプログラムを知っていたら教えてください」

というような内容でした。
昨今、日本では町おこしや村おこしの一環としていろいろなイベントを開催しています。それは「お祭り」であり、誰もが自由に参加ができたり、沿道からお祭りの光景を楽しんだりというものであり、つまりは「無料」のものが多いのです。日本ではお祭りは皆で参加し、皆で楽しむものなので、公的な色合いが強く、最初から入場料を徴収するようなものは皆無と言って良いでしょう。

「オカナガン・ワインフェスティバル」と聞けば、それはフェスティバルだから「お祭り」であり、沿道から眺めるだけでも楽しめるに違いないと思ってしまうのでしょう。ところが、ワインフェスティバル開催期間中であっても、町の中は至って普通で何も変わりがありまえせん。ダウンタウンに行ってみても、全くワインフェスティバルらしい雰囲気が見えないのです。いくら見渡してもワインフェスティバルの雰囲気が感じられないので、

「おかしいなあ?」
「どこでワインフェスティバルをやっているのかな?」

と思った方々が私に訪ねてくるという結果になるのですが、これは毎年決まったように必ず問い合わせを頂いていました。問い合わせを頂いた私は、これまた毎年のように困惑していました。その答えを知ってしまったら、がっかりするだろうことが分かっていたからでした。

「チケットは購入されましたか?」
「え?チケットを買うんですか?」

たいていはこうした会話からスタートします。そして、私はワインフェスティバルがどういうものなのか?を詳しく説明し、スケジュールやプログラムの概要を伝えます。そして、すでにチケットが完売している事も伝えなければなりませんでした。それを知った方々は、わざわざ遠方からケロウナに来られたにも関わらず、お目当てのワインフェスティバルを楽しむ事が出来ないまま、通常営業をしているワイナリーを訪ねるだけしかできないということになってしまうのです。




 <第165話> ワインフェスティバルの姿とは?
それでは、「ワインフェスティバル」とは、一体どのようなものなのでしょうか?
ワインフェスティバル期間中は、それぞれのワイナリーが特別コース料理をシェフと共同で企画します。ここに集うシェフは地元で有名なシェフばかりではなく、カナダ全土やアメリカから招集されます。ワインフェスティバルにお呼びがかかったシェフにとって、これは大変名誉なことですから、彼らは趣向を凝らしたコース料理を考案します。そして、ワイナリーとシェフがジョイントをした特別ワインディナーが楽しめるという企画になるわけです。

・ AワイナリーとBシェフの特別ディナー
・ CワイナリーとDシェフの特別ディナー
・ EワイナリーとFシェフの特別ディナー

というような組み合わせが、ワイナリーの数だけ誕生します。それがウェスティバル期間中、毎晩繰り広げられるのです。当然のことながら、料理はタッグを組んだワイナリーが造った新種のワインと組み合わせる事になります。レストランの客席数の数だけが前売りのチケットとして半年前から販売され、あっという間に完売してしまいます。

通常、コース料理は2つのパターンがあります。

・ 前菜、メイン、デザートの3品目のコース
・ 海の前菜、スープ、山の前菜、口直しデザート、海のメイン、山のメイン、デザートの7品目のフルコース

前者のコースで一人約4000円前後。後者のコースで一人約8000〜2万円前後。また、ある程度のドレスコードが求められます。リゾートのワインフェスティバルですから、ガチガチのタキシードは必要ありませんが、Tシャツにジーンズというわけにはいきません。こうなると、ちょっと観光気分で見学してみよう!というわけにはいきません。

私は仕事柄、毎年ワインフェスティバルの様々な会場に立ち入ってきましたが、こうしたディナーの会場で日本人の姿を見たことは一度もありません。ワインを中心にしたテーブルマナーも身につけておかなければなりませんし、慣れていないとかなり堅苦しく感じるかもしれません。

しかし、唯一、一般の人でも気軽に参加できるプログラムがあります。「大衆テイスティング大会」が、期間中にケロウナで1晩、ペンティクトンという町で2晩開催されます。ただし、これも事前にチケットの購入が必要です。このテイスティング大会には、オカナガン地方のほとんどのワイナリーが参加しており、会場いっぱいに仮設のカウンターを設置し、自慢のワインをサーブしてくれます。

ここに参加すると、ワインは好きなだけ飲めるという楽しさがありますから、一般市民にとっては一番なじみの深いワインフェスティバルのプログラムです。




 <第166話> ワインフェスティバルは情報発信のチャンス
2003年10月。毎年春と秋に開催されるワインフェスティバルは、私にとっての大きなイベントでした。そもそもケロウナという町を知っている日本人は極端に少なく、観光ガイドブック等にケロウナが記載される事はほとんどありませんでした。と言うことは、逆説的な見方をすると、「情報価値」が高い町だと考える事ができるわけです。

カナダと言えば、バンクーバー、ビクトリア、ロッキーの山岳リゾート、ナイアガラの滝、赤毛のアンで有名なプリンスエドワード島が集中的に雑誌や観光ガイドブックに掲載され、その他の町やエリアについての情報は発信されていませんでした。私はカナダに移住し、ケロウナに在住しているという立場をフル活用するために、自作のホームページを通してケロウナの魅力を発信し続けていました。その中で、大きなウエイトを占めていたのがケロウナのワイナリーの情報でした。これを一見的な情報で済ませてしまったら、表面的な安易な取材と変わりませんので、徹底して自分を主役にした上で、私自身の生の体験を伝えていきました。

・ ワイナリーのブドウ畑で収穫作業をする私
・ 真冬のアイスワインの収穫をする私
・ ワイナリーの倉庫で日本への出荷作業をする私

その他に様々なワイナリーとの絡みを写真レポートで発信し続けたのです。その中で、ワインフェスティバルはとても重要な情報ソースになりました。このとき、私が考えた事は、より新鮮でありながら、「そんなこと、普通は体験できないよ!」と感じてもらえることを私が実行するということでした。例えば、ワインフェスティバル自体には、チケットを購入して特別ディナーや、一般参加のテイスティング大会に「お客の立場」として参加する事は可能です。しかし、これでは面白くありません。もっとハードな体験が必要でした。私は取引先のワイナリーに出向き、オーナーにお願いをしました。私の話を聞いたオーナーは、心よく了解してくれ、「ああ、いつでも良いよ!」と笑顔で答えてくれました。

私はワイナリーのスタッフではありません。ワイナリーが造ったワインを日本に輸出する仕事をしている立場ですから、私とワイナリーは取引関係で結ばれています。私がワイナリーのオーナーに訴えた事は、日本市場でワインを正しく理解していただきながら販売に結びつけるためには、現地の情報が必要であるということでした。そのために私がワイナリーの一員として、ワイナリー側の立場からワインフェスティバルに参加させてほしい、という内容だったのです。

かくして、私は取引先のワイナリーの一員として、ワインフェスティバルに毎年参加していったのです。ケロウナを中心とするオカナガン地方で開催される春と秋のフェスティバルには必ず出席することになったのです。私の役目は、ワイナリーのカウンターブースに立ち、来場者が差し出すグラスにワインを注ぐことでした。

「これは新種のリースリングです。今年の出来は、やや酸味がまろやかですよ」なんてことを説明しながらワインをグラスに注ぐ姿をデジカメで撮影してもらい、ホームページで公開していったのです。


(例えばこんな感じです)

http://shop-canada.com/hpgen/HPB/entries/13.html

http://shop-canada.com/hpgen/HPB/entries/20.html



 <第167話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その1
あれは2002年の年が明けた直後だったと思います。次の日本向け輸出の段取りを組むためにワイナリーに出かけたときのことです。ワイナリーのオーナーが私に近づいてきました。そして、おもむろに私に向かって、

「アイスワイン・フェスティバルに行ってくれないか?」
「???」
「アイスワイン・フェスティバルを知らないのかい?」
「いえ、知っていますよ」

アイスワイン・フェスティバルは毎年1月末に開催されるイベントですが、通常のワインフェスティバルと異なります。春と秋のフェスティバルは、ワインの産地オカナガン地方の中心都市ケロウナとペンティクトンの2つの町が会場となります。一方、アイスワイン・フェスティバルは、サンピークスというスキーリゾートが会場です。冬の道路ですとケロウナからサンピークス・スキーリゾートまで片道3時間半のドライブです。

このフェスティバルはスキーリゾートのメインイベントになっており、スキーリゾートでの宿泊パッケージとともに売り出す仕組みになっていました。つまり、アイスワイン・フェスティバルに参加したければ、必然的に最低2泊3日のリゾートパッケージを購入しなければなりませんので「気軽に参加」と正反対で、参加するには敷居が高いものなのです。2000年のワインフェスティバルから毎回、春と秋のフェスティバルに参加していた私ですが、冬のフェスティバルは未経験でした。本来、オーナーが家族で参加する予定だったそうですが、急用ができたため、その代役として私と、私のビジネスパートナーのビクターで行って欲しいという依頼でした。まさかアイスワイン・フェスティバルに参加できるとは夢にも思っていませんでしたから、私は迷うことなく引き受けたのです。

楽しい楽しいスキーリゾートで開催されるアイスワイン・フェスティバル!

そんな遠足気分を想像していたのですが・・・
人生そんなに甘くないですね。2泊3日で参加したこのアイスワイン・フェスティバルは実に様々なドラマを生み出してくれました。そして、私はそのドラマの中で主人公のごとく、奮闘に継ぐ奮闘を経験させてもらったのです。カナダのワインを日本に輸出する仕事を2000年の春からスタートしましたが、本当にいろいろな経験をさせてもらいました。その中で一生忘れられない経験のひとつが、このアイスワイン・フェスティバルです。




 <第168話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その2
2002年1月。私とビクターのアイスワイン・フェスティバルの奮闘記が、間もなくスタートしようとしていました。そうとは知らず、私もビクターも、まるで小学生の遠足気分でした。午前9時過ぎにビクターが私を迎えに来ました。彼のピックアップトラックの助手席に乗り込んだ私は、間違いなく満面の笑顔だったはずです。そして私たちは、まずワイナリーに向かいました。2泊3日の日程で使用するテイスティング用のアイスワイン、白ワイン、赤ワイン、試飲用グラス一式をトラックの荷台に積み込みました。

「さあて、出発だ!」

日系三世カナダ人のビクターが運転し、私たちは一路、ケロウナからアイスワイン・フェスティバルが開催されるサンピークス・スキーリゾートに向かいました。1月末の空は薄曇りがどこまでも続くような空模様でしたが、私たちの気持ちは真っ青な空のように晴れ渡っていました。

「いいねえ!こういう仕事!」
「そうだね!いつもこういう仕事なら楽しいよね!」

仕事とは言いながら、初めての土地に行けるというのは、いわば旅行気分を味わえるのです。それが楽しくて仕方ありませんでした。ケロウナからハイウェイ97号線を北上します。1時間ほどでバーノンの町を過ぎると、ハイウェイを左折し、西方向のカムループスを目指します。この分岐点からカムループスまでの約1時間半の行程は、いかにも田舎のカナダを彷彿とさせる光景が広がります。村がポツポツと点在していますが、それ以外は寂しい冬の山並みが広がるだけの車窓です。

カムループスはカナダの中核都市で、その昔はゴールドラッシュで栄えた交通の要衝です。カムループスで昼食を済ませ、再びハイウェイを北上します。ケロウナからカムループスには何度か車で来た事がありますが、ここから北上するのは初めての経験でした。移り行く景色も初めて見るわけですから、私のワクワク感はさらに高まっていったのです。やがてハイウェイを降り、一般道に乗り換え、山奥に向かう一本道を上り続けました。雪に覆われた山肌しか見えない風景が1時間ほど続いた後、スキー場のゲレンデが見えてきました。

「サンピークスだ!」
「いよいよ到着だねえ」
「そうだよ、いよいよはじまるよ!」

まるで、遠足の目的地に到着したかのような、そんな無邪気な喜びでいっぱいのまま、やがてスキーリゾートのメインエリアが見えてきたのです。



 <第169話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その3
アイスワイン・フェスティバルという大きなイベントにも関わらず、事前情報は全く知らされていませんでした。これは、いかにもカナダ的なのですが、日本人の感覚から見れば信じられないことなのかもしれませんけれど、要するにその場その場で流れにまかせてやっていく、ということなのです。アイスワイン・フェスティバルもそうでした。遠足気分のまま到着した私たちでしたが、いったい何をどこからやればいいのか?全く分かりませんでした。しかし、そこはカナダ人のビクターですから手慣れたものでした。まず、私たちに割り当てられたホテルにチェックインをし、その後、フェスティバルの事務局を探しました。

「アイスワイン・フェスティバル事務局」 という看板が掲げられたオフィスがあるかと思いきや、そういったものが見当たらないのもカナダ的です。ワイナリーのオーナーから渡された現地責任者の携帯に電話をし、ようやく私たちは最初のキーマンに会える事ができました。

「ハロー! どこのワイナリーだい?」
「私たちは、ケロウナのセント・ヒューバータスです」

(私とビクターはセント・ヒューバータス・エステイトワイナリーとして来ていました)

私たちが到着した夜は、ワイナリー毎にテイスティングカウンターを設営し、来場したお客さんにワインをサーブするというプログラムになっていました。さっそく会場に案内されました。

「ここが、君たちの場所さ!」
「??? ここですか?」
「ああ!そうさ! どうだい?気に入ったかい!」

全くイメージと違っていました。春と秋のワインフェスティバルは、ケロウナもペンティクトンもコンベンションセンターが会場ですから、広い会場にワイナリーが集結し、仮設のテイスティングカウンターを並べ合います。ところが、アイスワイン・フェスティバルの会場責任者に案内された指定の場所は、ホテルのロビーだったのです。

「会場が無いの・・・?」

しかし、ほどなくしてその理由が分かりました。ここはスキーリゾートですから、ケロウナやペンティクトンにあるような大きなコンベンションセンターはありません。また、都会の大きなホテルと違って、スキーリゾートのホテルというのは規模が小さく、パーティールームや会議室を有していません。従って、全てのワイナリーがリゾート内のいろいろなホテルのロビーにテイスティングカウンターを設営し、そこでワインをサーブするということなのだそうです。

「ふ〜〜ん。なるほど。まあ、これはこれで楽しいか!」



 <第170話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その4
私とビクターは、ワイナリーから運んできたアイスワイン、白ワイン、赤ワインを、割り当てられたホテルのロビーに運び込みました。来場者がどれくらい来るのか?分かりませんでしたが、とりあえず全ての種類のワインを2ダースづつ運びました。カウンターとなるテーブルは、折りたたみ式の会議用テーブルが2台です。

2台のテーブルの脚を広げ、横に並べた後に、黒のテーブルカバーで全体を覆います。テーブルの脚が完全に見えないくらいのテーブルカバーですから、見た目には安っぽい会議用テーブルだということが分かりません。これは、通常、ケロウナやペンティクトンの会場でも同じ要領ですから、私は手慣れた動作でさっさと設営を終えました。

時計を見ると午後3時を過ぎたところでした。テイスティング開始の時刻は、午後6時ごろからになるとのことでした。まずは、これで今晩当日の用意が整いましたので、明日の予定を確認するべく、再び責任者に会う必要がありました。

「今日の夜は簡単。いつものようにワインをサーブすればOKだから」

しかし、そう言った直後、ビクターの顔が少しずつ険しくなっていきました。

「問題は明日の夜のこと」
「明日の夜? なぜ?」

私は細かいスケジュールを全く事前に得ていませんでした。慎重な性格のビクターが全て把握していると思っていたからです。

「明日の夜は・・・ ワインディナーの特別コースなんだよ」
「ふ〜〜ん。それって大変なの?」
「料金が・・・」
「料金? いくら?」
「200ドル」
「に、に、にひゃくドル!」(私は唖然)

ワインフェスティバルは、フェスティバルのときだけしか食べられない特別なコース料理を有名シェフがアレンジします。カップリングするワイナリーのワインに合うイメージでメニューを構成しますから、文字通り「一夜限りのオリジナル・ワイン特別コース」です。しかし、これまで私が経験してきたフェスティバルの特別コースで一人の料金が200ドルという高額な値段は聞いた事がありませんでした。

「200ドルって、どんな内容の料理が出るの?」
「・・・分からない・・・」

ビクターの本職はシェフです。彼は日本料理とフランス料理をこなせるシェフで、実はケロウナでは名の知れたシェフですから、その彼が想像も付かないというのですから、私も妙に不安を感じてきたのです。




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