カナダ人が将来 住みたい憧れの町 ケロウナで・・・
疲れた心を癒しませんか・・・
これから先の人生に必要なヒントとエネルギーが必ず得られるはずです

  
  
  

滝澤のカナダ移住&起業への道のり

 <第171話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その5
一人200ドルの特別コース料理を楽しみに来られるお客さん達に、私たちはセント・ヒューバータスのワインをサーブするわけです。これは、かなり緊張を強いられる夜になるということを覚悟しなければなりませんでした。

しかし、私たちの心配事はこれだけでは済まなかったのでした。

「とりあえず、明日のレストランの会場を見ておこう」
慎重派のビクターは、会場責任者を見つけ、彼に問いかけました。

「明日のディナーの会場はどこですか?」

スキーリゾートには、たくさんのレストランが点在しています。今回のフェスティバルでは、1つのレストランに対して2つのワイナリーがジョイントするということでした。参加したワイナリーは、20社ほどでしたから、明日の夜はリゾート内の10カ所のレストランがそれぞれ会場になるというわけです。

「セント・ヒューバータスさんは・・・」

会場責任者は、書類の束をめくりながら、

「うん、あった! 君たちは◎◎◎レストランだね!」

そう言うと、彼はスキーリゾートのマップを取り出し、ボールペンで◎◎◎レストランの場所に印を付けました。

「??? 何ここ?」

私もビクターも、一瞬声を失ったまま、責任者が記したスキーリゾートのマップの一点を見つめたまま、しばらく黙り込んでしまったのです。

「ここですか? ◎◎◎レストランは?」

ビクターは不安気に責任者に問いただしました。

「YES! サイコーな場所だろ! 君たちはラッキーだよ!」

そう言うと、責任者は満面の笑顔と大きな目で私とビクターを交互に見つめ返してきたのです。

「ビクター・・・ ほんとにこの場所なの?」
「・・・うん、、、、そうみたい・・・」




 <第172話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その6
会場責任者がスキーリゾートの地図上に示してくれたレストラン。私とビクターがセントヒューバータスのワインをサーブするフェスティバル特別ディナーの会場となるそのレストランは、スキーゲレンデの中腹にあったのでした。そもそもカナダのスキーリゾートですから、その規模は半端じゃありません。サンピークス・スキーリゾートも相当に巨大な規模でした。

どうやってワインを運ぶのか・・・?

その疑問に対して会場責任者は何の迷いも無いままに、「ゴンドラで運べば簡単さ!」と片目で軽くウィンクしてきました。会場となるレストランに運び込むワインは、合計10ダースほどでしたから、スキー客の邪魔にならないように2回に分けて運び込めば何とかなりそうでした。

「とりあえず、会場のレストランに行ってみよう・・・」

私とビクターは、スキーウエアのジャケットを上着にし、ゴンドラ乗り場に向かいました。ゴンドラに乗り、終点のゴンドラ駅の建物の中に会場となるレストランがあるのです。急角度をつけながらゴンドラが上に向かって登っていきます。外は視界が利かないほどの猛吹雪でした。15分ほどでゴンドラ終着駅に到着です。その建物はゲレンデのちょうど真ん中ほどに位置していました。レストランは通常営業中で、多くのスキー客で賑やかな光景が広がっていました。
「ここか。ここで明日の夜、ワインディナーがあるのか・・・」

会場のレストランを確認した私とビクターは、再びゴンドラで麓のスキービレッジに戻りました。

「どうだったい? 良い場所だろ!」

会場責任者のカナダ人が、満面の笑顔で私とビクターの前に現れました。

「ええ、まあ・・・」 

ここまで来たら、文句を言っても仕方ないですから、開き直ってやるしかありません。考えてみれば、会場となるレストランまで自力でワインを運び上げることが大変なだけであって、猛吹雪の中にさらされるわけではありません。

会場責任者は、明日のタイムスケジュールを私たちに簡単に説明してくれました。

「だいたい午後3時くらいにはワインを運び上げてくれ。その後は現場のシェフと打ち合わせをしてもらって、お客さんは午後5時過ぎから来店してくるだろうから、それに間に合うように準備をしてほしいんだ」

「分かりました。終了時刻は何時頃ですか?」

「さあて・・・? いつも夜中近くまで続くからねえ・・・」

確かにワインフェスティバルの特別ディナーの場合は、普通のレストランと違って、時間が長いのです。料理とワインで上機嫌になったお客さんのために、生演奏バンドが音楽を奏でながらダンスパーティーになるというのがケロウナ、ペンティクトンで開催される春と秋のワインフェスティバルのお決まりのパターンでした。そして、この冬のワインフェスティバルも同じだったのです。

「そうか・・・ 明日は長い1日になるな」

「ディナーが終わってホテルに戻れるのは夜中だね」

私とビクターはお互い顔を見合わせながら、ハードな明日を覚悟したのです。




 <第173話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その7
「ん? 夜遅くまで続くとしたら、終わった後はゴンドラで戻って来られるんだよね?」

一瞬、嫌な予感がしました。ゲレンデの通常営業はとっくに終わっている時間ですから、果たしてゴンドラが動いているのだろうか? その疑問に対して担当者は少しの迷いも無いままに私たちに笑顔で答えてくれました。

「ゴンドラなんてとっくに営業を終えているさ!」

「えッ?」

「ディナーが終わったら、お客もスタッフもみんなスキーで滑り降りてくるんだ!サイコーだよ!」

「えッ?」

「明日は晴れるよ! ゲレンデは真っ暗だけど、月明かりを頼りに麓まで滑ってくるなんて、サイコーじゃないか!」

ディナーが終わったら、スキーで滑り降りてくる?

ゲレンデ中腹にあるレストランで行われるワイン特別ディナーをわざわざ選ぶお客さんは、ぎりぎりまでスキーを楽しんだ後、レストランでディナーを楽しみ、その後、ほろ酔い気分で真夜中のゲレンデを滑り降りるというのです。これが「売り」になっているのだそうです。

さすがはカナダ・・・ 日本ではあり得ない・・・

スキー道具一式はレンタルで借りる事ができます。私とビクターは翌日のスケジュールをイメージしました。お昼過ぎにはレンタルスキーを一式借りて、特別ディナーでお客さんに振る舞うワインをゴンドラリフトでレストランへ運び上げ、特別ディナーが終わった後、月明かりに照らされるであろう夜のゲレンデを滑り降りるということになります。会場責任者から、最初にこの話を聞かされたときは、まったく予想していなかったことだったので、どう対応して良いのやら? 瞬間的に不安になりましたが、ワインを運び込む場所がゲレンデ中腹のレストランだということだけで、特別ディナーが’始まってしまえば自然に進んで行くだろうという事と、ディナー終了後はスキーで滑り降りるだけの事ですから、ものすごく困難な状況ではないということが実感できてきました。
「こんな経験はなかなか出来ないよね」

「そうだね、これはきっと面白い経験ができるよ」

私とビクターは当初の不安をよそに、明日のイベントを待ちわびるかのような気分に包まれながら、この日の夜に始まるワインテイスティング大会の準備を始めるべく、割り当てられたホテルのロビーへ向かいました。

外はすっかり暗闇に包まれ、スキーリゾートを照らす街灯が色づき始めると、私の目の前には雑誌やテレビでしか見たことがなかったカナダの冬のリゾートの姿が浮かび上がっていました。




 <第174話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その8
冬のカナダの夕闇は瞬く間に訪れました。私とビクターは、初日の試飲会場に割り当てられたホテルのロビーに向かいました。折りたたみ式の会議用のテーブルを広げ、持参したテーブルクロスでデコレーションを施します。一応、これで外見上はそれなりに変身させることができました。

次に試飲用のアイスワイン、白ワイン、赤ワインのボトルをテーブルの上に並べます。試飲用のグラスは参加するお客さんが持参しますから、私たちはワインのセッティングだけに集中するだけで十分でした。これで準備は完了です。

やがて、ホテルのロビーにアイスワイン・フェスティバルに参加しているであろう人影が目立ち始めてきました。このフェスティバルに参加するためには、あらかじめ参加費に該当するスキーリゾートでの宿泊プランを購入しなければなりません。購入した人たちには、フェスティバル本部から、記念のワイングラスが進呈されます。

そのグラスを持っていることが、フェスティバルに参加したお客であるという証明というわけなのです。極めて分かりやすく素朴なシステムです。私とビクターは、セントヒューバータス・エステイトワイナリーのスタッフとして、会場に溢れ始めたお客さんが次々に差し出す空のワイングラスにワインを注ぎ込んでいったのです。

「おたくの品種は何だい?」

「白はバッカス、赤はピノムニエです」

「バッカス! ピノムニエ! それらはブレンドかい?」

「いいえ、うちのバッカスもピノムニエも100%単一で作っています」

「ほう!そりゃ珍しい! では、バッカスからいただこうとしよう!」

さすがにワインフェスティバルにわざわざ参加されるだけのお客さんたちは、ワインに関する知識が豊富でした。しかし、変に知ったかぶったり、嫌味な態度の人は誰もいません。みなさん素直にフェスティバルを楽しんでいるのです。

私はこのスキーリゾートで開催されるアイスワイン・フェスティバルに参加したのは、このときだけですが、毎年、春と秋にケロウナで開催されるワインフェスティバルには同じようにワイナリーの試飲ブースでお手伝いをしてきましたが、カナダの人たちは豊富な知識を持ち合わせながら、同時に楽しむことに一生懸命なんだなあ、ということを思い知らされたのです。

いつの日か、日本でもワインを普通に楽しめる日が来ると良いなあ・・・
毎回ワインフェスティバルを終えると、私はいつもそう思うのでした。




 <第175話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その9
「おい、このバッカスは何だ?」

私が注いだ白ワイン・バッカスを飲み干した大柄な白人男性が、大声で問いかけてきました。

「な、何か、、、、問題でも・・・?」

一瞬、私の背中がビクッと小さく震えました。

「美味いじゃないか! 美味い!」
「あ、あ、ありがとうございます」
「これ、本当にバッカスか?」

大柄な白人男性が驚いて私に問いかけたのは無理もありません。

実はこの年のバッカスは凄まじいほどの味わいに仕上がったのです。今ではほとんど目にしなくなったバッカスという白の品種は、香りも味も深みが出にくい特徴があります。まして、近年はリースリング、ゲベルツ、エレンフェルザーといった香りの強い白ワインが脚光を浴びがちなので、バッカスやオラニアンスタイナーなどの優しい品種は物足りないと称されてしまいがちなのです。

セントヒューバータスも同様でした。時代の流れには逆らえず、それまで主役だったバッカスのブドウの樹は、リースリングやゲベルツの樹に植え替えられていました。事実上、最後の収穫となったバッカスが、奇跡的にも史上最高の美味しさになってしまったのは、きっと神様の力が働いたのだと思います。

「バッカス」というのは、古代ギリシャ神話に登場する「お酒の神様」ですから。

私は、そうした説明を目の前の大柄な白人男性に説明しました。

「なーーーるほど。おたくの最終のバッカスか・・・」

そう言うと、大柄な白人男性は空になったグラスを無言で私に差し出しました。

「次は赤のピノムニエです」

私が赤ワインのボトルに手を伸ばそうとすると、

「いや、もう一回バッカスを飲ませてくれないか」

大柄な白人男性は、今度はゆっくり味わうように、そのバッカスを喉の奥に流し込んでいきました。

「最高の味だよ! 素敵なワインに出会えた。ありがとう!」

大柄なその男性は、深々とお辞儀をするかのように丁寧に私にお礼を言うと、残り少なくなったバッカスを見つめていました。それは、ワインフェスティバルを楽しむ姿と接した瞬間でした。




 <第176話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その10
オカナガン・アイスワイン・フェスティバルは無事に初日のテイスティング大会を終えました。

毎年ケロウナで開催される春と秋のワインフェスティバルには参加していたものの、いつもと勝手が違うロケーションであり、しかもスキーリゾートでしたから、テイスティング大会用に持参したワインを乗せた車をどこに停めて、どこからどういう導線で運び込むのか、運搬用の機材はあるのか、分からないことだらけでした。

しかし、何事も緻密にスケジューリングされていないのがカナダらしいと言えばカナダらしいので、変に慌てる事も無く、私とビクターは初日のテイスティング大会を無難にこなしたのです。

そして翌日の朝を迎えました。カナダのスキーリゾートらしく、曇天の空の上から雪が舞い落ちてきていました。宿泊したのはスキーリゾート内のホテルでした。近くのカフェでコーヒーと軽めの朝食を済ませると、この日の夜に予定されていた「ワインフェスティバル特別ディナー」の会場にワインを運び込む作業に移ることにしました。

まず会場責任者のカナダ人の男性が常駐するオフィスを訪ねました。すると全く予想外の言葉が返ってきたのです。

「君たちの会場は急遽、変更になったよ」
「えっ!」

一瞬、嫌な予感がしました。スキーゲレンデの中腹にあるレストランよりも、さらに環境の厳しい場所に移されたのではないだろうか?と思ったからです。しかし、責任者の話はまったくその逆の内容でした。ゲレンデの麓に立ち並ぶホテルやレストランが集中しているエリアがあり、その中のレストランだというのです。責任者のカナダ人が常駐しているオフィスの隣の建物の1階にそのレストランはありました。私とビクターは突然の会場変更に面食らってしまいました。

「ようし!明日は午前中のうちに、ゴンドラリフトを使って特別ディナーに使うワインをレストランに運び上げるぞ!」

そんな気合いを入れながら前日の夜のベッドに入ったものですから、「あれれ?」というくらい拍子抜けしてしまったのです。

「いったい何があったのですか?」

ビクターは会場責任者のカナダ人に理由を尋ねました。

「ううん・・・ 実はPワイナリー社が、あの場所は嫌だと言ってきたんだよ」

アイスワイン・フェスティバルの特別ディナーは、2つのワイナリーのワインに合わせて、特別に招集された有名なシェフがフルコースのフレンチ料理をこの日のために創り上げます。

スキーリゾートにあるレストランは、それぞれ2つのワイナリーとタッグを組んで、最高の料理と最高のワインのコラボレーションを提供するのです。これは完全前予約制になっていて、当日にそれを目的に訪れても、この特別ディナーを味わう事はできません。予約は半年前には、ほぼ完売してしまうという凄まじい人気振りなのです。




 <第177話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その11
私たちのワイナリーとタッグを組むことになっていたPワイナリー社は、ナイアガラに巨大なワイナリーを持っており、オカナガン地方のブドウを使ったワインも作っている大手です。この大手ワイナリーが、ワインを運び上げることに苦労するであろうゲレンデ中腹のレストランから別のレストランに変更してほしい、と願い出た事が理由とのことでした。

「そうなのか・・・ それはそれで搬入作業は楽だから良いけれど・・・」

確かに仕事量は大きく異なります。ゲレンデ中腹のレストランにワインを運び上げるためには、何度もゴンドラリフトを使って上り下りしなければなりません。そうした作業がなくなるだけでも有り難い話なのですが、私はちょっぴり残念な気持ちになりました。

当初、指定されたレストランだったら、特別ディナーが終わった後、月明かりに照らされた誰もいないゲレンデを麓まで滑り降りることができるので、実は私はこれを楽しみにしていたことに気がついたのです。しかし、既に会場となるレストランが変更と決まったわけですから仕方ありません。

さっそく、私とビクターは、変更になったレストランに向かいました。歩いてすぐのところにそのレストランはありました。ワインを積み込んでいた車をレストランの近くまで移動させ、この夜の特別ディナーに使う白ワイン、赤ワイン、アイスワインが入った箱を車からレストランに運び込みました。

その作業は何も問題なくあっという間に終わってしまったのです。このレストランで今晩の特別メニューを担当するシェフに挨拶をしました。

「よく来てくれたね!今夜は楽しくなるよ!」

細面のシェフは気さくに答えてくれました。

「お客さんのゲートオープンは18時だから、17時に最終ミーティングをするので、17時になったら来てください」

細面のシェフの指示はこのようなものでした。

「17時?」
「今、何時?」
「11時過ぎ・・・」
「時間がたっぷりあるよ・・・ どうする?」
「どうしよう?」

私とビクターは、予想に反して余ってしまった時間の使い道をどうするか? お互いに顔を見合わせたのでした。




 <第178話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その12
会場を担当する責任者のシェフから指定された集合時間は17時となりましたので、半日丸々の時間が空いてしまいました。

「どうする?」
「何する?」

私とビクターは再び顔を見合わせました。

「滑ってみる?」

おもむろにビクターが私に問いかけてきました。

「??? ビクター、スキーできるの?」

彼はアイスホッケーの上級者ですが、ダウンヒル・スキー(いわゆる普通の滑り降りるスキー)はできないはずでした。

「できるよ! やってみたい!」
「そうか・・・ じゃあ、スキーしよう!」

私たちはさっそくスキー道具一式をレンタルしました。

このスキーリゾートは、サンピークスという巨大なスキー場で、カナダ国内でも屈指の規模を誇る本格的な山岳リゾートです。

SUN PEAKS SKI RESORT
http://www.sunpeaks.co.jp/winter.html

長いゴンドラに乗り、麓から山頂へ向う3分の2ほどの標高地点に私たちは降り立ちました。
カナダのスキーリゾートは、とにかく一気に山頂付近まで登ってしまいます。
しかし、必ず初心者・初級者が迂回するコースがあるのです。

それらが、色分けで分かりやすく表示された看板があちこちに立っています。

黒色・・・上級者コース
青色・・・中級者コース
緑色・・・初心者コース

という具合です。

緑色の初心者コースに進もうとした私を、ビクターはすぐに制してきました。

「ブルーコースに行こう!」
「大丈夫?」
「平気!平気!」

私は不安を覚えながらも、ブルーコースに向いました。私は滑りながら途中で何度も振り返っては彼の姿を確認しました。
びっくりしたことに、彼はとても器用に滑ってくるのです。

さすがにアイスホッケーで鍛えられているせいなのでしょうか、上下左右のバランス取りが上手なのです。まったく危なげなく滑ってくるので、確かにこれならブルーコースでも滑れるわけです。

まったく危なげなく麓まで滑り降りた私たちは、再びゴンドラに乗り、さらにそこから山頂に向うリフトに乗り継ぎました。

「上手く滑るにはどうしたら良い? 教えて!」

彼はすっかり上機嫌で、スキーの楽しさを知ったようでした。

見渡すと、眼下に広がるカナダBC州の白く連なる山々の峰が遥か彼方まで見通せました。
空の青い色と、雪を冠った峰々の白のコントラストが、360度のパノラマとなって私の目の前に広がっていたのでした。




 <第179話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その13
「そうだよな・・・ ここはカナダなんだよなあ・・・」
日常の生活と仕事の場所と違ったところに立つと、今、自分が間違いなくカナダに居るんだ!ということを強烈に感じる事ができます。ついつい日々の仕事に追われていると、こうした新鮮な感動や喜びが薄れがちになります。

改めて自分がカナダに移住したこと、仕事を繰り上げて実践していること、毎日を確実にカナダで生きていること、そうしたことを一瞬で感じさせてくれるカナダの広大な風景が、冬の大パノラマとなって、私の目の前に広がっていたのでした。

「早く行こう!」

そうせかすビクターの声に従って、私たちはブルーコースを滑り出しました。
しばらく滑り降りたコースの脇で止まり、私はビクターにスキーレッスンを始めたのでした。

私は3歳からスキーをしています。日本にいた頃は志賀高原でインストラクターをしていましたから、スキーレッスンはもともと得意な分野です。

ビクターのように、ほとんど初心者でありながら、体のバランスが上手に取れる人というのは、バランス感覚が良いことと、足腰の力が強いという特徴があります。しかし、転びたくない一心から、ずーっと足腰に力が入った状態なのです。
滑り降りるというよりも、踏ん張って耐えているというイメージです。

これですと、すぐに足腰が疲れ果て、痙攣を引き起こしたり、疲労が蓄積した挙げ句、まったく力が入らなくなってしまいます。

彼のようなタイプに与える課題はただ一つです。

「いかに力を抜くか?」

ということと、力を抜いた状態をいかに長く保たせるか? ということです。
上級者というのは、滑っているときには、ほとんど力を入れていません。力を入れるのは、ほんの一瞬だけなのです。
そんなことを説明しながら、力を抜いたまま滑ることを、彼に対しての課題としたのでした。

私はサンピークス・スキーリゾートのダイナミックな風景を楽しみながら、カナダの本格スキーリゾートを心行くまで満喫したのでした。

さあ、スキーの時間は終わりです。
これから、仕事の現場に向うのです。

私たちはレンタル一式を返却し、ホテルに戻って着替えを済ませ、今宵のワインフェスティバル特別ディナーの会場に向ったのでした。




 <第180話> アイスワイン・フェスティバル奮闘記 その14
「オカナガン・アイスワインフェスティバル」
いよいよメインディナーの始まりです。

私とビクターは、セントヒューバータス・エステイトワイナリーのワインマスターとして、この日のためだけにフェフが用意した料理に合わせるワインをお客さんにサーブしなければなりませんでした。

午後6時前に会場のレストランに到着した私とビクターは、この会場を担当するキッチンスタッフ、ウエイトレス、ウエイターと一緒に、リーダーであるチーフシェフ(マイケル・イングラム氏)説明を受けました。

デザートまで含めると全7品目のフレンチ料理のフルコースです。
前菜からメイン、デザートに至まで、全ての料理の素材、特徴、味わいを、マイケルが丁寧に説明していきました。
ウエイトレスやウエイターは真面目な表情でメモを取っていました。

「すごいな・・・みんな真剣だなあ」

私はなんだかとんでもない場所に来てしまったかのような感覚に捕われました。

「で? どの料理にどのワインを併せるんだい?」

何の前触れもなくマイケルが私たちに質問を投げかけてきました。

「うっ・・・・・」

緊張で体が硬直している私をよそに、ビクターがワインの解説を始めました。

「私たちセントヒューバータスは、本日のために3種類の白ワイン、2種類の赤ワイン、そしてアイスワインを用意してきました」

「品種の説明をしてくれないか、ビクター」 

マイケルがビクターに投げた質問と同時に、ウエイトレスとウエイターたちが一斉にメモを取る準備に入りました。

「白はリースリングとピノブランとバッカスです。赤はピノノアールとガメノアールです。アイスワインはセントヒューバータスが初めて作った赤のアイスワインで品種はピノノアールです」


おおーーーーーーー!

総勢15名ほどのウエイトレスとウエイター、そしてキッチンの若手スタッフたちが一同に声を漏らしました。

「とても良い組み合わせだね。白はメジャーな辛口のピノブランと珍品と言われるバッカスか。赤は軽やかで誰にでも愛されるピノノアールと、これまた聞き慣れない品種の、ガメ?ガメ・・・?」
マイケルがビクターに助け舟を求めるように見つめました。

「ガメノアールです。通常はガメイと呼んでいます」
すかさずビクターが返答しました。

「ありがとう、ビクター。そのガメイ、あとでちょっとテイスティングさせてくれないか?」

「ええ、よろこんで!」

「それとアイスワインは赤のアイスワインと言ったね? ピノノアールの」

「ええ、そうです!」

「それは素晴らしい! 最後のデザートにそれを使えばお客さんは大喜びだね!」




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